右手側のスイッチを押しても音が切り替わらず、全体に異常な音が出ている
という不具合の修理を承りました。
スイッチを操作すると確かに音はあまり変化せず、押した感触も変です。
音は調律が大きく狂っている感じの音で、全体として弱いです。
ちなみに、この楽器は中古として譲り受けた物という事です。
音の切り替えがうまく行っていない原因は内部ではなく、
スイッチ周辺にある事が分かったので、分解してスイッチ部分を取り外しました。
一部のスイッチで、スイッチから伸びるアームの根元部分の樹脂が割れて
アームが固定されずに指で動かせる状態でした。
赤矢印は割れている部分で、黄矢印は動いてしまうアームです。
本来はスイッチと直交する向きに固定されていてスイッチを押すと連動して
アームも傾き、そこに繋がる機構を押して音が切り替わります。
右上のスイッチは正常な物です。
良く見ると異常のある方は樹脂が溶けたようになっています。
恐らく、この症状は以前から認識していて、割れた部分を溶かして
接着修理しようと試みたようです。
この部分は大きな力が掛かるのでその程度では絶対に直りません。
アームの根元が割れているスイッチの裏面です。
亀裂が入っているのがわかります。
表面の樹脂を溶かしても亀裂は接着されません。
この部分は繰り返しの大きな力が掛かるので時々このような不具合を見ます。
メーカーによってはこのように樹脂部分が華奢で弱い物があります。
機種が変わっても、スイッチの形が変わっても傾向は変わりません。
近年の物は大丈夫と思います。
同じような問題があるスイッチは7個あるうちの3個で見つかりました。
中央の物は症状が酷く樹脂を溶かして修理しようとした痕がありますが
他の2つは割れていても修理痕は見られません。
修理は樹脂部分の補修、補強で行いますが面積が少ないので難しい修理です。
その後も繰り返し大きな力が掛かるのできちんと直さないと再発します。
同じ部品が手に入れば交換できますが、同じ機種や同じ形に見える部品でも
微妙に違っているので交換は現実的ではありません。
スイッチを受ける側にも異常がありました。
赤矢印の部分は他の同じ部品と同様に垂直でなければいけませんが
斜めに曲がっています。
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